(韓国 ハンギョレ紙 国際ニュース 2007・11・1)
http://www.hani.co.kr/arti/international/europe/247320.html 原文
スペイン“フランコ独裁清算”法案通過
<フランコ統治はフアシズム>の規定、 公式の糾弾。内戦犠牲者の屍の発掘に予算支援。反対派の処刑・投獄・軍事裁判の無効化。
写真説明 スペイン南部マラガの古い共同墓地で、去る16日、労働者たちが集団埋葬された遺骸を発掘している。マルラガ/AP ヨンハップ
スペイン議会が、フランコ独裁政権の過誤を清算する歴史的な法律を通過させた。スペイン下院が、野党の強硬な反対にも拘らず、10月31日、フランコ将軍のクーデターと40年間の独裁統治を非難する“歴史的記憶に関する法律”を通過させたと、AP通信などが報道した。この法案は様式的な上院の採決を経て、官報に掲載されたあと効力が発生する。
この法は、フランコ政権をファシスト政権として公式に糾弾し、地方政府に、スペイン内戦の期間(1936~39年)の間に作られた集団埋葬地を発掘する活動に資金を支援するまでした。また、略式軍事裁判を通して数千名の反対派を処刑し、投獄したことを不法として宣言し、左派共和政府に忠誠する民兵隊によって処刑されたカトリック司祭など、犠牲者たちのための象徴的な補償策も模索している。
この間、フランコ独裁時代の支配層の命脈を引き継ぐ、第一野党、国民党は、“過去の傷を再び暴きだし、スペイン社会を分裂させるもの”として、法案に反対して来たが、ホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ総理が指導する社会党(訳注・社会労働党)は、何ヶ月の協議のあとに、去る8日、少数の政党らと法案の通過に合意をだしてもらったところだ。
法案が通過すると直ぐ、内戦期間中、フランコ民兵隊に殺害された民間人達の遺骨を発掘してきた団体のエミリオ・シルバ会長は、“スペインの歴史に、極めて重要な瞬間”だとして歓迎した。しかし彼は、“数多い犠牲者たちと家族らが名誉回復も出来ないまま、すでに世を去った。”のであり、“法律通過が、始まりであって終わりではない。”と強調した。
法案を発議した、ホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ総理は、2004年就任直後から真相究明委員会を構成して過去清算の意思をはっきりとしてきた。彼の祖父は、第二共和国の将校として服務するが、1936年フランコが指導する反乱軍に処刑された。先の総選挙で、サパテロ総理に席を譲り渡した国民党のホセ・マリア・アスナル前総理の祖父は、フランコの友達だった。
イ・ジョンエ記者
(訳 柴野貞夫)
解説
社会労働党を中心とするサパテロ政権は2004年総選挙に於いて、米軍のイラク侵略戦争に加担する国民党を批判し、国民の支持を受けて8年ぶりに政権に返り咲いた。
1931年の王政打倒による第一共和制が、33年右派の勝利で頓挫した後、36年、選挙によって、再び労働者農民の左派政権が誕生した。この「人民戦線政府」と呼ばれたスペイン第二共和制は、その直後から資本家階級、地主、軍部の暴力によるクーデターによって内戦に晒されることとなる。共和制の側に立つ労働者の戦いはその枠を突き破り、「労働者の権力」の萌芽を生み、またカタロニア、バスク地方における、中央政府への民族闘争をも巻き込むものとなった。フランコとファランヘ党は、支配地域において一般民主主義の否定、民衆と労働者階級への 徹底的な軍事的暴力的支配を手段とするファシズム体制で臨み、その名は、処刑と虐殺、投獄と拷問の代名詞となった。フランコの軍部とファシズム体制(スペイン資本家階級、地主、カソリック協会)は、ドイツ・イタリヤのファシズム政権の、軍事的財政的支援と、資本主義的欧米の黙殺、そして、ソ連とナチスドイツの野合およびスペイン労働者の組織に持ち込まれたコミンテルンとモスコーの分裂行為(国際共産主義運動におけるスターリニズムの犯罪)にも助けられて、39年勝利を収め、戦後は米帝国主義の庇護の下で、1975年フランコが、地獄に落ちて死ぬまで続いたのである。
サパテロは、就任当初よりこのフランコ独裁体制による民衆の迫害の実態を歴史に留めておく法の制定に意欲を燃やしていた。11月1日AFPは、その内容を次のように報じている。
「スペイン下院は、1975年間で続いた独裁体制下で迫害された人々の名誉回復などを盛り込んだ「歴史の記憶法」(Law of Historical
Memory)の法案を可決した。同法案は独裁政権の実態を明らかにし、当時の文書保存を義務付けたうえで、民主主義の原則を強固にし、その価値を高めることを目的とする。具体的な内容は以下の通り。
内戦と独裁政権下における、全ての有罪判決を〈違法〉とし、当時の制裁措置、暴力の不当性を正式に認める。
独裁政権下の犠牲者や遺族を対象に、年金や賠償金など国が補助金を交付する。
内戦と独裁政権下における犠牲者の集団埋葬地の場所の特定や遺体の発掘を国が支援する。
公共施設において、フランコ将軍らの反乱、内戦、独裁体制を記念する品や、それらを讃える文言を排除する。
首都マドリード郊外のフランコ総統の遺体が埋葬された霊廟における政治集会を禁止する。
内戦と独裁体制時に国外追放や国外移住によりスペイン国籍を失った人達の国籍を回復し、その子孫にもスペイン国籍を認める。
内戦と独裁体制時代の文書をサラマンカ(Salamanca)の施設で保管する。」と。
われわれは民衆は、国家権力がその歴史の中で犯した犯罪に、法の形式にすぎない時効を認めるわけには行かない。国家は常に民衆によって、監視され、その権力を制約する民衆の戦いが無ければ、法の名の下に民衆を暴力的に支配しようとする。過去の犯罪の清算をなしえない国家は、それを正当化し、新しい装いでまたそれを繰り返す。日本の天皇制帝国主義によるアジア民衆に対する戦争犯罪は清算されたであろうか?従軍慰安婦に対する国家としての清算は行われたか?日本へ強制連行された朝鮮と中国民衆に対する謝罪と賠償はおこなわれたか?「治安維持法」による日本民衆への投獄拷問虐殺と言う軍国主義天皇政府の数々の犯罪行為は、その訴追を裁判所によって門前払いされているではないか?学校教育において国家の直接介入によって戦争犯罪の歴史の改竄が行われているのではないか?
サパテロ政権のスペインは、「歴史の記憶法」の制定によって国家の犯罪を70年まで遡り、韓国のキム・デジュンは、2003年10月、チェジュ島の国家による虐殺事件を「4・3法」制定によって追及し、ノ・ムヒョンは、2005年12月1日、独立国家機関「真実・和解のための過去史整理委員会」、および「国情院」にも、「過去事件真実究明を通した発展委員会」を設置することによって、一世紀に遡った国家犯罪の究明を行っている。彼らは、「国家の犯罪に時効は無い」と断言しているのだ。サパテロ首相は、過去の究明(「歴史の記憶法」)が「民主主義の原則を強固にし、その価値を高める」、と言っているのだが、日本の民主主義者を自称する執権政党の連中は、この言葉をなんと理解するのであろうか。
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